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目の解剖学動画

目は感覚器の一つです。感覚器には、聴覚、臭覚、味覚、触感などがありますが、そのなかでも視覚から得られる情報は膨大で、脳の大部分が視覚と関連した情報処理を行っているとも言われています。

鍼灸の学校では、視機能や眼科医療に関する授業が十分な程ありません。また、目に関する興味や知識、治療経験が業界全体を通して少ないという印象を受けています。

そこで、当ページでは、鍼灸学校で使用される標準的な「解剖学の教科書」をベースに、眼科の基礎解剖学について解説していきたいと思います。これらの知識は、眼科系鍼灸を臨床で行うためには必須級の知識だと思います。

視覚器

眼球は光を受容する器官で、眼球とその付属器官(眼瞼・涙器・眼筋)からなります。眼球は、眼窩(がんか)という窪みに脂肪に包まれた形で収納されています。また、眼球は、強靭な視神経4つの眼外筋が眼球の奥で「総腱輪」によって結束されて固定されています。眼球の大きさは2.5cm、重量は7.5g、眼窩の奥行きは約4cmです。

例えば、眼精疲労の患者さんが、目の奥が、痛いと言った場合、目の奥は、どのような構造かを熟知していれば、治療戦略をたてやすいと思います。また、視神経炎の患者さんが目を動かすと、目の奥がズキンと痛むという症状を訴えることがありますが、これも眼窩深部の解剖学的特徴を知っていれば理解できる症状です。稀ですが眼窩先端症候群、海綿静脈洞症候群など重篤な疾患の場合もありますので、目の奥が痛いという症状は、専門医の受診を優先することも大切です。また、目の奥が痛む代表的な疾患が群発頭痛です。近年、群発頭痛は、三叉神経節とヘルペスウィルスの関連性が示唆されています。

最終的に、視神経は視神経管を通り、視交叉を行い、視床・外側膝状体を経て、大脳の視覚野に接続します。

眼球の構成

眼球の壁は3層からなり、その内部は水晶体により前後に二分されます。眼科では、角膜外来、緑内障外来、ブドウ膜外来、網膜・硝子体外来など、専門が細分化されています。

強膜(外壁)

眼球のうち、角膜を除く5/6を覆う外側の膜が強膜です(眼球=白色というイメージの元)。滑らかで強靭な繊維性の結合組織から成っています。血管が少ないため白色で、その後部は視神経を包む膜に移行しています。家でいう「外壁」の部分です。

角膜と結膜と強膜の位置関係について

角膜は、瞳孔(黒目)の前面に位置する、透明な無血管組織です。一方、私たちが白目と呼ぶ部分は結膜と強膜の二重構造になっています。上層部は透明な結膜で、下層部が白色の強膜です。

結膜も強膜も、毛細血管が豊富にあるため、血管が怒張すると、いわゆる充血目となります。二重構造になっているので、結膜血管が怒張している場合は結膜炎。強膜の血管が怒張している場合は、強膜炎となります。強膜炎は膠原病由来の場合があり、自己免疫疾患との関連性も重要となります。

角膜

角膜は、強膜が唯一到達していない透明な組織で、家でいう「光を取り入れる窓」にあたります。角膜は5層からなり、外界に接する角膜上皮細胞、ボーマン層、角膜実質層、基底膜、角膜内皮細胞があります。角膜上皮は、角結膜輪部に存在する幹細胞(ステムセル)から細胞分裂が行われるので、皮膚のようにターンオーバーがなされています。そのため、多少の傷は数日で修復されます。角膜に関しては、LASIKなどの屈折矯正手術を受けた患者さんのケアなどが臨床上重要です。また、ソフトコンタクトレンズの長期使用による酸素不足によって起こる角膜内皮細胞減少症なども理解する必要があると思います。その他、角膜疾患には、角膜が円錐状に歪み不正乱視を来す円錐角膜などがあります。

角間

ブドウ膜(中壁)

ブドウ膜の解剖学的特徴は非常に重要なのですが、結構スルーされてしまっていて、ブドウ膜って何という鍼灸師も多いのではないでしょうか。まず、ブドウ膜というのは、眼壁の中層にあたり、脈絡膜毛様体虹彩の三つを合わせた総称です。眼科では、ブドウ膜外来などの専門外来があります。

ブドウ膜の特徴は二つあります。一つは、眼球内部を暗室状態(映画館状態)にすることです。角膜から入った光を網膜に効率よく収束させるためには、眼球内が暗室である必要があります。そのため、ブドウ膜にはメラニンという色素が多く含まれています。ちなみに原田病は、このメラニン色素が炎症を起こす自己免疫疾患ですが、メラニン色素の多い組織である目、耳、髄膜、皮膚、毛髪などに多発的な炎症を生じることがあります。

そして、二つ目は、眼球に張り巡らされている神経や血管の経路としての役割です。ブドウ膜は、家でいう外壁と内壁の中間部分で、家だと電気配線や配管などを通すルートです。人間のブドウ膜も同様で、目の奥にある眼動脈から分岐した血管網が、ブドウ膜を通って眼球全体に栄養や酸素を供給しています。また、眼圧をコントロールする房水循環においても、房水生産、及び老廃物や水分吸収はブドウ膜が担っています。

網膜(内壁)

眼球壁の最内部は、網膜と呼ばれ、光の刺激を神経の興奮(電気信号)に変えて視神経から脳へ伝える部分です。網膜は昔のカメラの「フィルム」に例えられます。基本的に、網膜の視細胞が損傷した場合、視機能を回復するのは難しいと言われていますので、非常に大事な組織です。網膜疾患では、網膜剥離、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、黄斑変性症などが代表的です。

視神経乳頭

網膜には視神経の出口があり、眼底写真では、白いお椀のように窪んで見える部分があります。ここを視神経乳頭と言います。眼圧の影響を受けやすい部位なので、視神経乳頭の陥凹が強い場合は緑内障の可能性があり、眼科で「視神経乳頭陥凹、緑内障の疑い」という診断となります。例えるなら、風船の息を吹き込む部分です。

黄斑部

視神経乳頭の約4㎜外側に褐色に丸くなった部分(直径約2mm)があり、黄斑部と呼びます。黄斑部の中央は窪んでおり、ここを中心窩と呼びます。視細胞のうちの椎体細胞が密集しており、「最も物がよく見える」部分です。黄斑変性症では、視界の中心部分が見えにくくなったり、ゆがんで見えたりします。また、中年男性に多いとされる「中心性漿液性網脈絡膜症」は、鍼灸治療の効果が得られやすい病態です。糖尿病性網膜症では、眼底出血や網膜剥離になどに黄斑浮腫が合併する場合があります。

光を電気信号に変える網膜の仕組み

私たちが物を見るためには、目に取り込んだ光(光子)を、網膜の視細胞が電気信号に変換して送信する。そして、視神経を伝わった電気信号を脳が処理するという工程が必要です。網膜は、眼球の最も内側にあり、光を透過する10層に及ぶ膜構造からなっています。

光を感知する視細胞は、網膜の一番深部にあり、網膜色素上皮細胞に支持されています。光の粒子は9層を通過して、最深部の視細胞と反応し電気信号を発生させます。

網膜の細胞は、奥側から視細胞双極細胞神経節細胞があり、神経節細胞から伸びた神経線維が集まって視神経を形成しています。また、細胞間のネットワークを支持する水平細胞アクマリン細胞も存在します。

今回の主役は、この視細胞です。視細胞は「錐体細胞(ついたい)」と「桿体細胞(かんたい)」の2タイプに分かれます。

世界に色彩を与える錐体細胞

人間の網膜には、赤、緑、青(光の三原則)を感知する視細胞が存在します。赤、緑、青をブレンドすることで私たちは100万もの色を識別することができると言われています。ちなみに、犬の網膜に色彩を感知する細胞が2原色(赤と青)しかなく、全体が青黄く見えています。人間の錐体細胞には、L(赤錐体)、M(緑錐体)、S(青錐体)があり、それぞれが波長特性を持っています。

ただし、この錐体細胞は、多くの光がないと働かないので、太陽や電気のような明るい光が必要になります。錐体細胞は、網膜の中心部分に密集しており、高い視覚能力を有しています。

暗いところで真価を発揮する桿体細胞

私達の目は、暗闇でも微かな光があれば、物を識別することができます。暗がりでは、桿体細胞が光を感知します。桿体細胞は感度が高く、少量の光にも反応できます(タングステンタイプ)。しかし、色の識別は出来ません。桿体細胞は網膜の周辺部分に多く分布しているので、見え方はいまいちです。

視細胞の構造

視細胞は内節(細胞支持器官)と外節(電気発生装置)に分かれています。錐体細胞の場合、円板に存在するフォトプシンが3つの分子配列に分かれており、吸収する光の波長が異なります。その結果、私達は明るい光の中では視覚に色彩が得られています。

光の粒子と結合するナノ世界の話

錐体細胞では、視細胞の円板部にフォトプシンというタンパク質に包まれる視物質があり、レチナールという物質を蓄えています。オプシンとレチナールを合わせてフォトプシンという訳です。(桿体細胞の場合はロドプシンです。)

このフォトプシンが光と結合すると細胞膜のナトリウムチャネルが閉じて、細胞膜外のナトリウムが増加し脱分極(オーバーシュート)が起こります。電気信号は双極細胞、神経性細胞、視神経を経て脳に送られます。

夜盲症の原因は?

光が暗くなると、視細胞は桿体細胞にバトンタッチされます。桿体細胞は色の識別はできませんが、ごくわずかな光からも電気信号を発生させることができます。夜の暗がりでは、桿体細胞が活躍します。この桿体細胞の外節にある視物質はロドプシンと言われます。ロドプシンという蛋白質はビタミンAによって構成されていますで、ビタミンAの摂取量が少ないと、ロドプシンの働きが弱くなり、暗いところでの見え方が悪くなります。これが、いわゆる夜盲症です。尚、夜盲症は、網膜の病気などでも起こります。

私たちは、なぜ色が見るのか?

リンゴは、なぜ赤く見えるのか考えたことはあるでしょか。私たちの世界は、あらゆる物が色彩を持ち、色鮮やかです。そもそも「色」とは何なのでしょうか。

太陽や電球は、直接光を発する光源です。そのため、太陽や電球の「色」は「光の色」だと言えます。

一方、光を発しない物体は、光が反射(投影)されることで、初めて色を見ることができます。(暗闇では色は見えません。)

全ての物体は、特定の色を反射、または吸収する性質を持っています。例えばリンゴは、太陽や電球の光を受けると、七色の光のうち赤色を反射します。その反射した赤色の光が、私たちの目の網膜に到達すると、赤い色として見えるのです。

眼球内の水分

眼球内は水分で満たされ、一定の圧が保たれています。その水分の内容は、眼房水(サラサラした水分)と硝子体(どろっとしたゲル状)に分かれます。それぞれの機能を見ていきましょう。

眼房水

角膜と虹彩の空間を前眼房、虹彩と水晶体の空間を後眼房といい、いずれも眼房水で満たされています。眼房水は毛様体上皮から分泌され、後眼房から虹彩をへて前眼房へと流れ、角膜と強膜の境界部にある強膜静脈洞(シュレム管)から眼静脈へ吸収されます。眼房水の分泌と吸収のバランスにより眼圧が正常(10mmHg~20mmHg)に保たれています。このバランスが崩れると眼圧が上昇するなどして、緑内障のリスクが高まります。緑内障の治療は、この眼房水の分泌と吸収を点眼薬によってコントロールするのが標準治療となっています。

眼房水のもう一つの役割
眼防水は眼圧を一定に保つほかに、眼球組織に栄養を供給するという大切な役割を担っています。特に水晶体や角膜は無血管組織ですので眼房水からの栄養供給に大きく依存しています。角膜細胞は涙液からの栄養供給を受けると同時に、角膜内皮細胞が吸い上げる眼房水からも供給を受けています。一方で、この角膜内皮細胞の数が減少してしまうと、角膜内の水分代謝が上手くできず角膜浮腫を起こしやすくなります。

硝子体

水晶体と網膜の間にある無色透明なゼリー状の物質で、大部分は水分からできています。眼球の後ろ3/5を占め、眼球の内圧を一定に保っています。鍼灸の臨床上においては、飛蚊症(ひぶんしょう)や後部硝子剥離、また硝子体出血や硝子体混濁という症状について知っておく必要があります。

ピント調整

ピント調節に関わるのは、水晶体毛様体筋チン小帯という組織です。水晶体(クリスタルレンズ)は、角膜の後方にある透明なレンズです。水晶体は、水分を多く含んだ弾性繊維から成り、毛様体筋に360度周囲を、糸(チン小帯)で固定されています。特に毛様体筋はピント調節筋とも呼ばれ、この毛様体筋の疲労が眼精疲労の原因の一つと言われています。

水晶体は、角膜と共に光を屈折させ、網膜の中心部分に光を収束させる役割を持っています。また、水晶体は非常に弾力性のある組織で出来ており、毛様体筋の働きにより、厚くなったり、薄くなったり形が変形することで、ピント調整(オートフォーカス)を行っています。

水晶体

水晶体は直径約10mmの両面が凸レンズ様の物質で、特殊な繊維状の細胞で出来ています。柔らかく弾力性に富んでいます。水晶体は、やや黄色がかった透明色で、無血管の組織です。網膜に有害な紫外線をカットしています。水晶体が混濁すると、光の透過率が悪くなり、視力が低下します。これを白内障と呼びます。また、弾力性が低下するとピンと調節力が落ち、いわゆる老眼となります。

次に、水晶体の特性を詳しく見ていきましょう。

水晶体は、カメラのレンズに当たる部分で、ピントのオートフォーカスを担っています。この水晶体が加齢とともに弾力を失って硬くなり、ピント調節機能が低下した状態が、皆さんもよくご存じの「老眼(老視)」です。最近では、20代前半の若者でも、ピント機能が低下し、治療的に遠近両用メガネを使用するなどケースもあります。

子供の水晶体は、みずみずしく弾力性に富んでいます。しかし、30歳を過ぎた頃から、水晶体の細胞内の水分が、徐々に減少していきます。40歳を過ぎるころには、老廃物の蓄積により、透明性や弾力性がさらに低下していきます。

水晶体の透明性について

水晶体は玉ねぎのような構造をしています。水晶体は、ほとんどが(65%)とタンパク質(35%)で構成されています。水晶体は外側から、水晶体上皮水晶体皮質水晶体核から成り立っています。

水晶体は嚢(のう:Capsule)という透明な袋に包まれており、その袋の中で細胞分裂が行われ、成長から老化というプロセスを経ます。皮質は水晶体上皮細胞が生産した線維細胞が積み重なってできた部分です。さらに中心部には繊維細胞が集積され、「」と呼ばれる部分が形成されます。

一般的な人体組織では、細胞が生まれ変わる際に生じる老廃物を、マクロファージなどが吸収(消化)します。

眼房水による代謝はありますが、水晶体内には血管がありません。そのため不要になった代謝物は、嚢(のう)の中に蓄積されていきます。長い年月をかけて、少しづつ容積は増ています。その結果、水晶体の中央が圧縮され、硬い核が形成されていきます。

水晶体が白く濁る病気が白内障です。

白内障は加齢性変化で起こるのもの一般的ですが、アトピー性皮膚炎、眼外傷、強度近視(病的近視)などで、若年層などにも起こることがあります。当院では、網膜剥離のオペ後など、特殊なケースも治療しています。白内障そのものに対して鍼治療を行うことはありませんが、患者さんが、まぶしさや見えにくさを訴えた場合は、眼科受診を勧めることがあり、白内障が見つかるケースもあります。

毛様体

脈絡膜の前方に続く海綿様に肥厚した部分が毛様体です。毛様体から内方に伸びる小さな糸のような繊維を毛様体小帯(チン小帯)と呼び、水晶体は一定のテンションを保ちながら支持されています。毛様体の中には平滑筋である毛様体筋があり、水晶体の厚みを調整し、焦点距離を変化させます。(オートフォーカス機能、自動ピンと調節機能)。眼精疲労は、毛様体筋の疲労が原因の一つと言われています。

虹彩

毛様体から起こり、水晶体の前方でこれを周囲から縁どるように存在します。カメラの絞りにあたるもので、中心の空洞部分は瞳孔(直径3~6mm)と呼ばれます。虹彩は、神経、毛管、色素細胞に富んでいます。虹彩は、内側を輪走する瞳孔括約筋(副交感神経)があり、外側には放射状に走る瞳孔散大筋(交感神経)から成っています。この2種類の平滑筋が、網膜に入る光の量を調整しています。虹彩は、角膜という窓に掛かる暗幕のカーテンです。

縮瞳に関係する瞳孔括約筋は動眼神経の副交感線維が接続しています。一方、散瞳に関係する瞳孔散大筋は頚部の「上頚神経節」から交感神経線維がつながっています。