動眼神経の解剖図

私たちの目は、近くの物を凝視する場合、どのような生理反応を起こすのでしょうか。

例えば、パソコンやスマホで画面上の文字を見る場合です。この時、水晶体は厚くなり、瞳孔は収縮し、眼球は両眼とも鼻側に寄ります。この三つの生理作用は、自動的に起こる仕組みになっており、総じて近見反応と呼ばれています。近見反応は、毛様体筋、瞳孔括約筋、眼球内側直筋が、動眼神経の作用によって同時に作動することから目のモーター・システムとも呼ばれています。モーターというのは、この3つの動作が、いずれも動眼神経(Oculomotor nerve)が関与しているからです。

近見反応と眼精疲労の深い関係

逆に言えば、近距離の物を、長時間にわたり固視し続けると、毛様体筋、瞳孔括約筋、眼球内側直筋に過大な負荷が掛かることになります。その結果、ピントが合いにくくなる、視界がぼやける、物が二重に見える、などの疲れ目の症状が生じます。

そうして目に疲労が蓄積してくると、眉間やこめかみに力を入れ、寄り目状態をキープするようになります。ぼやけてくる焦点を合わせようと頑張って目や首や肩に力を入れます。また、まぶしいのを我慢して作業を続けます。

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調節、縮瞳、輻輳は3セットで起こる生理的反応で、正常なら片眼に起きた反応は、もう片方にも起きます。しかし、オーバーユースで、どれか一つでも機能不全に陥ると、全体のバランスが崩れてしまいます。

動眼神経まとめ

眼精疲労を考える上で、動眼神経という神経の役割は重要です。動眼神経は脳神経の一つで、主に4つのパートに分かれ、目の動き(視機能)を制御します。

ピント調節(内眼筋)
水晶体を厚くする毛様体筋に接続する副交感神経線維です。近くを見る時に働きます。
瞳孔調節(内眼筋)
瞳孔を収縮させる瞳孔括約筋に接する副交感神経線維です。光に反応して瞳孔を収縮させます。また近くを見る時に瞳孔を絞ります。
眼球運動(外眼筋)
目を動かす内側直筋、下直筋、上直筋、下斜筋に接続する運動神経です。近くを見る際の輻輳調節に関与します。
上瞼の挙上
上瞼を挙げて目を開く上眼瞼挙筋に接続する副交感神経線維です。

動眼神経のルート

眼球内に入った動眼神経は、毛様体筋と瞳孔括約筋に接続します。

私たちは近くの物を見る時に目の中の水晶体を厚くします。水晶体を厚くすためには、毛様体筋を緊張させる必要があります。この毛様体筋に接続するのが、動眼神経から分岐した短毛様体神経という副交感神経繊維です。

同様に眼球内に入った動眼神経は、瞳孔括約筋にも接続します。瞳孔括約筋が作動すると瞳孔が絞られるので近くに焦点が合いやすくなります。また、光に反応して瞳孔を収縮させます。

両者は内眼筋と呼ばれ、ともに近くの物を集中してみる時に強く働きます。ですから、頑張って近くを見続けると、動眼神経に負荷がかかります。

さらに、動眼神経は眼球を動かす眼外筋や瞼を挙上する上眼瞼挙筋に接続しています。眼外筋には、内側直筋、外側直筋、上直筋、下直筋、上斜筋、下斜筋の6つがあります。そのうち、4つの筋肉に接続します。

  • 内側直筋(動眼神経)
  • 外側直筋(外転神経)
  • 上直筋(動眼神経)
  • 下直筋(動眼神経)
  • 上斜筋(滑車神経)
  • 下斜筋(動眼神経)

また、上まぶたの上眼瞼挙筋にも接続します。上瞼には他にミューラー筋という首から伸びた交感神経が接続しています。瞼における神経支配率は動眼神経の方が大きく、まぶたを初動させる、瞼が下がらないように良い位置をキープするのが動眼神経です。

尚、まぶたを開け続けることが、眼精疲労の大きな原因の一つと言われています。閉じてくる瞼を頑張って開けるのは相当なエネルギーを消費します。文字通り、動眼神経は、水晶体を動かす、瞳孔を動かす、眼球を動かす、瞼を動かす、という、まさに目の器官を動かすための神経なのです。いずれも、動眼神経は、近くの物を凝視する時に活発に働く神経です。

毛様体筋の疲労によるピント調節不全

目が疲れる原因のひとつに、ピント調節機能をつかさどる毛様体筋疲労(平滑筋)があります。物を見るということは、物にピントを合わせることです。ピント調節には、水晶体と毛様体筋とチン小帯という組織が深く関わっています。

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水晶体は、角膜の後方にある透明なレンズです。水晶体は、毛様体筋に付着した「チン小帯」でピンつと引っ張られた状態で固定されています。この糸が緩むと水晶体はテンションから解放されて厚くなります。

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通常、遠くを見ている場合や安静時は、毛様体筋の緊張は緩み、水晶体は薄くなります。一方、近くを固視した場合、毛様体筋が緊張して、水晶体は厚くなります。つまり、ピント調節には毛様体筋の緊張が深く関わっています。長時間、PCやスマホ画面を見続けると、毛様体筋が常に緊張した状態になるので、筋疲労が起こります。これはピントフリーズ現象とも呼ばれてます。

遠視や過矯正

もともと視力が良い人や、眼鏡・コンタクトの度数が強めの人は、水晶体を「より厚く」しなければ近くにピントが合わないので、眼精疲労になりやすいと言えます。

老眼

子供の水晶体は水分が多く柔軟性に富んでいるので、強いピント調節力を有しています。しかし、加齢と伴に水晶体は水分と弾力性が減少して硬くなっていきます。固い水晶体を一生懸命に変形させて、頑張て近くの物を見続けることで、毛様体筋に大きな負荷がかかります。特に、40代以降は眼精疲労になりやすいので注意が必要です。

瞳孔調節と眼精疲労

瞳孔の役割は、光のまぶしさを調整するだけではありません。瞳孔か縮まることで、近くの小さな対象物が、ピンボケや歪みなく、シャープに見えるのです。これは、瞳孔径と焦点深度の関係です。目を細めると良く見えるのはなぜか?にもつながります。

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カメラに接写(マクロ撮影)という機能があります。これは、近くの小さな物体にピントを合わせる機能です。その時、カメラのF値を大きくします。F値(focus)とは「絞り」のことで、レンズ内に入る光を調節する仕組みです。入口を広げる(F値小)と、光をたくさん通し、入口を狭める(F値大)と、少しの光しか通しません。

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この原理は、人の瞳孔(虹彩)と似てますね。

そして、カメラで近くの物を撮影する場合、絞りが緩いほど画像はピンボケします。逆に絞りが強いほど画像はシャープになります。

人の目も同じです。近くにピントを合わせるためには、水晶体を厚くするだけでなく、瞳孔を小さくする必要があるのです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 人間の虹彩.gif

皆様の中には、眼科の眼底検査で、瞳孔を開く目薬を差した後、数時間にわたりまぶしくて、ピンボケの状態が続くという経験をされたことたがあると思います。

あれは、虹彩の絞りが開放状態になりますので、「光が極端にまぶしい」、「近くにピントが合わない」ということです。副交感神経を麻痺させる点眼薬を使用しますので、瞳孔括約筋や毛様体筋が一時的に麻痺するためです。

ここで話を眼精疲労に戻します。スマホやPC画面を長時間、集中して見る場合、瞳孔はデスプレイが発する強い光の刺激を常に受けることになります。

そして、瞳孔の大きさを調節する瞳孔括約筋(平滑筋・副交感神経支配)や瞳孔散大筋(平滑筋・交換神経支配)は強い緊張を強いられることになります。

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重度の眼精疲労の患者さんの中には、光に対する瞳孔調節力が著しく低下している方が少なくありません。このようなケースでは、スマホやPC画面が「まぶしくて見ていられない」「ピンボケがひどい」という症状が生じる場合があります。

多くは、自律神経失調により瞳孔括約筋の機能が低下し、虹彩の絞りが不完全になり、まぶしさやピンボケ状態になるケースです。

逆に、瞳孔散大筋の過緊張というケースもあります。

同じスマホやパソコンを見る場合でも、「趣味で見る時」と「仕事で見る時」で、目の疲れ方が違うといことがあります。本来、近くを見る動作は、リラックスした時に行うものです。人は生理的に近くを見る時、副交感神経が働くようになっています。

瞳孔障害について

瞳孔の不具合は、片眼性か両眼性かを、まず考えます。瞳孔障害の原因には、交感神経性瞳孔障害、交感神経性瞳孔障害、混合性瞳孔障害があり、自律神経失調の他、外傷や様々病気に起因する場合があります。また、瞳孔反応が正常にも関わらず、光が異常にまぶしいというケースがあります。理由は様々ですが、角膜炎やブドウ膜炎、網膜疾患などがあげられます。

輻輳機能と眼精疲労

次に、輻輳(ふくそう)に関して解説します。輻輳という言葉は聞きなれない語彙ですが、ようは「寄り目」反応のことです。

私たち、人間の眼球は、解剖学的には、外向きに位置しています。以下は生理的な輻輳です。ちなにみ、当ホームページで使用している画像は版権有料画像を自らが購入して使用しております。以下のMRI画像には、神経や眼外筋肉がきれいに映っています。

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  • 昏睡状態→外方(離れ目)に向きます。
  • 睡眠時→ゆるやかな緊張状態にあり、軽い輻輳状態となります。
  • 安静開眼時(ぼーとしている時)→目に映像が入ると通常の輻輳状態となります。
  • 近くを見る時→寄り目状態となります。
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調節性輻輳について

重要なのは、近くを見る時の調節性輻輳です。近くを固視する時、目の中では水晶体が厚くなり、ピント調節が働きます。そして、水晶体が厚くなるのと同時に輻輳反応が起こります。ピント調節と輻輳は、セットで自動的に起こる作用です。

この時、遠くが良く見える人、または度数の強い眼鏡やコンタクトを使用している人ほど、輻輳反応が強く起こります(目を寄せる筋肉に負荷が掛かりやすい)。

それは、遠くが良く見える人が、近くを見る場合は、一所懸命に水晶体を厚くしなければならないからです。そのため、遠くに視力を合わせている人は、長時間の近用作業で眼精疲労になりやすくなります。(水晶体を厚くするために余分なエネルギーを使ってしまいます。